塩野七生著「ローマ亡き後の地中海世界 上下」を読み終えました。
目から鱗の驚きでした。
ローマ帝国滅亡4世紀から
中世の1000年間が終わりルネッサンス期を超えて、
スペインやイギリスの領土国家が覇権を握る16世紀まで
永遠1000年間以上、地中海世界が海賊の餌食になっていたとは!
幼いころ読んだ本の中に海賊ものが多くあり、その舞台はカリブ海など大西洋だったので、
地中海が海賊の活躍する舞台だったとは思ってもみませんでした。
そして西洋文化の奥底に海賊に対する恐れが深く刻まれているのに対して、
大航海の時代まで基本的にヨーロッパの陸の覇権を争ってきたヨーロッパの人たちが、
なぜ海賊の襲撃にリアリティを感じているのかもわかりませんでした。
しかし、この本を読んで、1000年以上、ヨーロッパの地中海沿岸の住民にとって、海賊の存在は、
突然現れ、命を狙われたり、収奪されたり、奴隷として連れ去られたりする日本人の天災のようなものだということを知りました。
そしてその海賊の正体が、なんと、最後にはトルコ帝国公認の地位まで得た地中海アフリカ沿岸住民サラセン人によるイスラム教徒の海賊であったのです。
そして襲われたのはローマ帝国滅亡により、統治機構が崩壊し、住民各自が自衛せざるを得ないキリスト教徒たちだったのです。
1000年以上に渡って、地中海を挟んでイスラム教徒とキリスト教徒の凄まじい闘いが繰り広げられていたということ。
聖地エルサレム奪回を目的としていると習っていた十字軍も、その前哨戦としてこの地中海でのイスラムとキリスト教の対立が背景にあったということ。
この本で初めて知りました。
21世紀現在の世界でも、イスラム諸国とキリスト教諸国との対立の深層心理には、1000年に渡る深い憎しみが込められているのだと感じました。
知らなかったことを知ることは、世界が違って見えてくることだと実感しました。
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