· 

タッチング

 イギリスの皮膚科医モンティ・ライマン著「皮膚、人間のすべてを語る」を読んで、実際の治療で実感していることの裏付けを得たようです。

 皮膚は人体最大の臓器で、外界からの異物の侵害を防ぐと同時に、人体内部のものがあふれ出さないための袋のような役割も持ち、熱い、冷たい、重い、痛みなど感覚器でもあり、そしてそれらの感覚器が脳に伝達されて、そこで情動と結びつき、心地よさ、不快感、なども生み出す、万能の臓器です。

 私の実際の治療では、患者さんの身体に直接触れるということで、私の手の皮膚のと患者さんの皮膚とのふれあいによって、患者さんの身体の状況を読み取り、また、鍼灸やマッサージなどの皮膚に対する物理的な刺激を与え、その刺激が患部の痛みや痺れ、そして脳に作用して自律神経のバランスを整える作用を行います。

 この本では皮膚科学についての最新の知見が紹介され、また、古来から人類だけでなく、感覚器を持つ動物すべてが本能的に知っているタッチング(接触)の個人の身体の効用から、それが集団形成に進化的に優位であるという効用について、科学的根拠を明らかにしながら提示しています。

 薬を投与して、身体の成分構成を変化させて治療するという西洋医学のやり方ではなく、東洋医学的見地に立った包括的な身体治療はどのようなものか、日々患者さんの反応を見ながら試行錯誤を試みていますが、

 この皮膚の科学は、その治療方針の原理となるもものだと確信しました。