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信頼は安心の基盤

 小林桜児著「人を信じられない病」を読んで、人を信じることができる人とできない人の二種類の人間がいるのだと改めて認識しました。

 小林氏は薬物依存症治療専門の医師です。

 患者との対話を通じて依存症の人たちが「意志が弱い」、「快楽に溺れやすい」などといった患者当人の人格に関わる問題だとされ、説教(やめさせようとする側の正しさの押し付け)や強制的に断薬させたりする従来の方法では、再発率が高い現状から、実は依存症者が依存するのは、「人=人間関係」に依存できないから「物=薬物」に依存するためという「信頼できない」説を提唱しています。

 依存症者はその生育の過程で、本来ならば自分を保護してくれて生きていくうえで安心の基盤を与えてもらえないような環境の元で育ち、強い不安と孤独を抱えている。

 それが薬物の種類によって非合法薬物に依存する人は、その不安定さをアクティングアウトさせるような非合法の薬物に依存しがちで、不安定さを当人の我慢や忍耐でどうにか持ちこたえ、周囲の期待にそうように生きてきたストレスを合法薬物(処方される抗不安剤、アルコール、市販の風邪薬など)に依存することで、いきぐるしさを乗り越えてきたのだと。

 それゆえ、依存症治療には、まず彼らの不安と孤独に寄り添い、とことん彼らの口から生きづらさを語ってもらうような治療者との関係性を築くことが肝要だと小林氏はいいます。

 このような不安と孤独は人との関係が間接的で一方的なものになってきていて、スマホやゲームなどのテクノロジーの活用によって、それが表面上解消されているかに思われているため、人々は益々それらに依存していくと小林氏は指摘しています。

 信頼の欠如が「物」に依存する原因であるということに深く納得しました。