ウォルター・シャイデル著「暴力と不平等の人類史」の中で、社会の格差を縮める作用を持つものとして4つ挙げられ、「戦争」、「革命」、「崩壊」、「疫病」が挙げられていました。
人類が農耕生活を始めて、余剰生産物とその貯蔵が可能になった時から、貧富の差が生じ、富を持つものが社会の上層としてその他を支配するという歴史が人類史の大部分を占めてきたということ。
しかしながら、ごくわずかの間、その均衡が破れる契機があり、それが上にあげた4つの要因によるというものでした。
「戦争」の項目で日本が挙げられ、第二次世界大戦の総力戦による国力総動員で戦争に突入した結果、明治以降世界でも有数の格差社会であった日本は、戦時中の国民総動員の総力戦によって急速に格差が縮まり、敗戦と全土が空襲で焼け野原になり、事実上国力がゼロになりました。
日本の戦争と侵略の原因を貧しい農民の生活の糧を獲得するためだったとし、それを繰り返さないためには平等で民主的な日本社会を実現することを占領政策の目標と掲げられ、日本はまれにみる平等な社会に急転しました。
そしてそれは冷戦という戦争持続が続いたため、その後80年代近くまで続きましたが、やがて戦争の危険性がなくなると、また再び格差社会が戻ってきて、21世紀の格差社会日本になっているという分析でした。
私は1965年昭和40年生まれですが、物心ついてから、平等の空気に包まれていたのだなあと、昨今の格差社会との対比で感じます。今よりも物質的にはずっと貧しく不便であったように覚えていますが、突出して貧乏であったり、富んでいたりした人はあまりいなかったような気がします。
それが歴史的に格差が縮小したまれな時代であったのだと改めて知りました。
格差の少ない社会は、怨さの少ない、みんなが他者よりも自分自身の未来を見つめる余裕があった社会だったように、子供ながらに感じていました。
自分自身がどのような歴史的流れの中で位置していたのか、歴史がいろいろ教えてくれます。
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