ウイルス学者の武村政春氏の本を読んで、「ウイルス愛?」に溢れる氏の文章を読んで、自分がいかにウイルスに対して「色眼鏡=偏見」で見ていたかと気づきました。
ウイルスというと病原体というイメージですが、実は人に対して病原性を持つウイルスはウイルスの中でもごくわずかで、地球上のありとあらゆるところに存在する膨大な種類と量のウイルスは、全く人間に害を加えないものであり、むしろその中には人間にとって役に立つもの、さらには人間のDNAの一部に、つまりは私たち人間はウイルスそのものであるということです。
そもそも人間に危害を加える病原体としてのウイルスも、もともとは宿主である動物の体内で何万年にもわたっておとなしく共存していたものを、人間が宿主獣の生息する領域に侵入したために、人間に伝染するようになってしまったという「身から出た錆」的な事情もあります。
昔からちょっと体を冷やしただけでなぜ風邪をひくのか?疑問に感じていましたが、風邪のウイルス(だけでなくあらゆるウイルスにも言えるのですが)は、私たちの周りいたるところに目に見えないミクロなサイズなだけで、うじゃうじゃいて、人間の体の中に侵入するらしいのです。
それを防ぐのが免疫力で、病原性を持つウイルスに対して人間が対処できる姿勢は防御だけ「専守防衛」です。
またウイルスはヒトの体内の腸内細菌の働きを助け、細菌と共存関係にあったり、食品保存のため細菌を殺すバクテリオファージというウイルスを食品添加剤として使用したり、抗がん剤の運び手(ベクター)としてウイルス遺伝子工学技術を利用したりと、「ウイルス=悪」のイメージが覆される新たなウイルスと人との関係が築かれているようです。
また生物とも無生物とも分類されないウイルスは、実は全生物の祖先ではないかと、細菌よりも大きな巨大ウイルスがつぎつぎと発見されていることで生物分類に変革を迫る事態になっていると武村氏はいいます。
現在新型コロナ禍が全人類に禍をもたらしていますが、ウイルスを人間を脅かす悪者としてだけとらえるのではなく、別の視点も必要だと思いました。
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