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病気を言わず、見せず、悟られず

 作家であり精神科医である帚木蓬生氏が著書「老活の楽しみ」の中で森田療法のことば言葉「(病気について)言わず、見せず、悟られず」を取り上げていました。

 精神科医として多くの患者さんの「心気症(体の変調を異常に気にすることからくる神経症)」の症状に接してきて、気にしすぎることが症状を悪化させていることを痛感されているからでしょう。

 自分が苦しんでいることを誰かにわかってもらいたいという気持ちから、痛い、辛い、苦しいと周囲の人に訴えるでしょうが、初めは同情していろいろ情報や有効だと思われるアドバイスをしてあげたりしていても、一向にその人の症状は治まらなく、病院をザッピングし、症状を訴え続けることにうんざりして、仕舞にはその人を避けてしまいます。

 そうするとその人は孤独になりますます自分の症状に固執するようになり、症状は益々悪化していくという負のスパイラルに陥ってしまいます。

 それから抜け出すためには、まず病気について考えないようにしようとすることは病気についてさらに考えてしまうことにつながるため、とりあえず、病気について人にわからないようにすること「言わず、見せず、悟られず」を心掛け、健康で元気であることを「つくろう」ことで他人からの肯定的な評価を受けるというベクトルに方向転換することが肝要だということです。

 そのうえで目の前の課題に集中して取り組み、身を忙しくして脳に考える暇を与えない。

 そうしているうちに症状も自然治癒していく。

 自分一人で苦しんでいることは辛いので、つい愚痴ったり、訴えたりしてしまいますが、愚痴は快楽であるので依存症になってしまいます。となると自分の会話の大部分が愚痴になってしまいます。

 そうならないためにも、辛いこと、嫌な事を人に悟られないように努めること。いつもニコニコ笑顔でいること。

 それは自分を偽るのではなく、自分を鼓舞するためのパフォーマンスを意識して実践していくことだと思いました。