ウクライナの国民的作家アンドレィ・クルコフの600ページにも及ぶ大著「大統領最後の恋」を読み終えて、
ロシアという大国の隣国(ソ連時代は併合)に生きるということの心理的圧迫感を全編に渡って重苦しく感じました。
物語は、冷戦下ソ連の属国であった時代、1992年ソ連崩壊後ウクライナが独立した時代、2012~5年の(小説が書かれた時点の)近未来と時空が三部構成で、主人公の女の子を追いかけることだけが生きがいの無職の若者が、ひょんなことから政界入りして、傀儡の大統領になっているという設定で、大統領になってからは事故を装って心臓移植をされ、自身の生命までもが、多分ロシアによってコントロールされているという、ウクライナ情勢を暗喩されています。
主人公の大統領は、実在の大統領の数々がモデルとされていて、小説で描かれる出来事も実際にウクライナで生じた政変などが下敷きとなって、ありえないことなのだけれども、大国の支配の影響を受け続けながら存続するという実態は、このような悪夢のような世界なのかもしれないと、ウクライナの国民が無意識に感じ続けたことを、作者が掬い取って描いたように思われます。
このような作品が生み出されるウクライナが置かれた地政学的な要因と文化。
今回のロシア軍のウクライナ侵攻で必死の抵抗を続けるウクライナ国民を支える精神が理解できたような気がします。
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