俳優・演出家白井晃氏が、現在コロナ禍で被っている演劇界の悲惨な現状を訴えています。
その中で白井氏は、演劇などの芸術が持つ「同時性」が、今回のコロナウィルス流行が人々に与える不安感で、粉々になってしまったと憂いています。
演劇や音楽などの芸術は、アーティストと観客が同じ空間で、表現されるもの、そして受け取ることが、同じ空間で共有されることによる「同時性」によって、芸術が生み出される表現様式です。
それは人類の文明の初期から行われてきた行為で、テクノロジーの発達によって必ずしも同じ空間を共有しなくえも、それを味わえるようにはなってきましたが、それだからこそかえって同時性のライブ感を味わいに、わざわざ人々は劇場やコンサートフォールや映画館に足を運び、同時性の感動を味わってきました。
それが今回のコロナウイルス感染による恐怖や不安により、同時性を成立させていた同じ空間(同じ時間のほうはテクノロジーの発達によりある部分可能になってきました)を共有することが不可能になってしまいました。
同時性を成り立たせていた行為は、「不要不急」の価値観ではかられ、低位もしくは必要でないものとしてとらえられるようになりました。
これは緊急事態では必要不可欠な対策ではあるのですが、このような価値観に支配された世の中に生き続けることは、人間が本来持っている同時性の希求が満たされないまま、生きることの喜びがやせ細ってしまうような気がします。
今まで通りの無防備な同時性はもはや不可能な状況になってきましたが、感染予防に対する正しい知識を駆使して、この「同時性」の復活の方策を私たちは考えださなければならないと思います。
そのためには、心の底から強く「同時性」の喜びを味わいたいという私たちの思いが原動力となるでしょう。
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