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画家の長生きの秘訣

 先日NHKラジオ深夜便「明日へのことば」のコーナーで、横尾忠則氏が語っていた中で「(自分もそうである)画家が長生きなのは、「(言葉を通さずに)肉体で直に考えているからではないか?」というユニークな持論を述べられていました。氏が影響を受け当時売れっ子のグラフィックデザイナーから画家に転向するきっかけともなったピカソをはじめ、多くの有名画家は90歳を超える長寿で、晩年まで旺盛な活動をしていたことからも言えると。

 横尾氏は81歳。近年は骨折など様々な病気を頻発しているそうですが、人生哲学としている「流れに逆らわず身を任せて生きる」から、病気や老いに対しても抵抗せず自然体で受容している様子が伺われました。

 「言葉を通さずに肉体で考える」ことが、どうして長生きにつながるのか。それは実際にそのようにして生きている画家など概念をビジュアルでダイレクトに把握するタイプの人でないと、実感としてわからないと思いますが(私は完全に活字派なので全く想像できないのですが)、それは言葉で把握することは世界を切り取ることで、それは世界の複雑さを切り捨て加工することで、その過程はストレスフルであり、また、そうして作り上げた世界は複雑系のヒトにとっての自然体に反しているのではないか。それがストレスとして心身ともに蝕んでいくのではないかと、関西訛りのある自然体の話し方をする横尾氏の語りから感じました。

 近年は氏が惹かれる「Y字路」をテーマに絵を描きつづけているようですが、氏の描くY字路は、不思議な迷宮の入り口のような、不気味な感じさえ受けます。

 私にとって難しいことですが、ビジュアルで概念把握をするように心がけてみようと思います。そのためにも対象をよく観察することから始めます。