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現実との乖離

 昨日東京都のコロナ新規感染者数が800人を超えました。

 この調子でいくと年末までには1000人を超えるような感染拡大の勢いです。

 けれども、私を含め、たぶん医療関係者や周囲に感染者のいない一般人には、

 感染者数というデータと実情の乖離が生じているのではないでしょうか。

 つまり

 「ぴんとこない。=データが示している現状を肌身で実感できない。」

 緊急事態宣言が出る前、また最中、感染者数の数値がうなぎのぼりになり、

 その数値に一喜一憂していた時に感じた危機感、恐怖が湧き起こらない、再現できないのに、

 自分の中の情動と乖離しているような違和感を覚えます。

 それはあの時感じた危機感、恐怖感はどこにいったのか?

 それは心の底にあるはずなのに、それにアクセスできないというもどかしさと、

 現実感を喪失しているのではないかという自分自身に対する不信感などが

 ごちゃまぜになったような気持ちです。

 しかし、コロナ感染流行も、はや、1年近くが経って、

 現実の私は、すっかり感染予防のための行為が習慣化=つまり無意識化し、

 現在のような非日常に慣れてしまい、

 そして何より、感染の実態に直接遭遇していないという、

 自分の周囲5メートル以内が真実だというバイアスに罹っているのだと思います。

 そしてそのバイアスは、危機感や恐怖のリアルな情動をすっかり消してしまう作用があるのだと思います。

 心の底にあるそれらにアクセスできないのではなく、喪失しているのです。

 一生懸命イマジネーションを高めて、心に危機感、恐怖感を掻き立てようとしても、

 慣れと、私の直接触れる現実の力が強くて、実感が湧き起こらない現象が今生じているのだと思います。

 それは自分自身の心身の心身の疲弊を防止するための適応の結果だとも思えます。

 ただ、あまりに情動が麻痺させられると、自分の都合のいいように現実を解釈してしまうおそれがあります。

 適度に現実を喚起し、適切な行動を取れるためにも、

 必要で適格な情報収集と、イマジネーションを培っていく努力は必要だと肝に銘じました。