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腹に訊け

 エムラン・メイヤー著「腸と脳」を読んで、ヒトのすべての営みをコントロールしているのは、実は、腸=腹であることを知りました。

 「腸ー脳連関」といって、腸と脳を結ぶ双方向の神経経路(主に迷走神経が担っています)があり、腸と脳との様々な結びつきが明らかになってきています。

 そしてこの連関の一方である腸における機能の担い手が身体にとって異物である腸内微生物であるということです。

 腸内微生物は外部である腸(腸は人体の内部を貫通するホースの内壁のようなもの)と、人体の一部である腸壁の境界に生息し、人体が摂食による食べ物の成分や細菌、ウイルスなどの異物と接することによって生じる変化を、刻一刻と脳に伝え、脳はそれを受け取り、それに対する指令を神経伝達物質やホルモンの分泌の形で腸や体のほかの部分へと出していきます。

 興味深いのは、腸からの情報が、脳の情動を生み出す部分にも作用し、腸の状態が私たちの心にも影響を与えていることです。

 さらに私たちが無意識で判断する直観においても、この腸から送られてくる様々な情報が蓄積されたデータをもとに行われているということです。

 自分の人生にとって重要な出来事に当たって、なぜか知らないけれども、「これだ!」という体の内部からつきあげてくるような確信ー日本語では「ハラ」、英語ではGUT(胃の感覚という)ーが生じることがあり、往々にして、その感覚に従った行動をしたことが、後々振り返ってみると正解であったということがあります。

 日本文化は「ハラの文化」と言われますが、日本人は古来から、この腸ー脳連関を無意識のうちにきづいていたのでしょう。

 正しい「ハラ」の声になるためには、ストレスを少なくして、腸内微生物によい食べ物を摂取し、腸内環境を常日頃から整えておくことが大切だと感じました。