野島剛著「香港とは何か」を読んで、一連の香港の民主化運動が何を求めて行われているのかの背景が分かりました。
野島氏は香港留学経験もあり、台湾に関する本「台湾とは何か」も執筆されている元朝日新聞記者です。
香港自由化の主役は20代の若者であるということ、強権的な「本国」中国の政策に対して、自治の自由を求める思想的なものであるということ、そしてその運動が一部は過激化しているものの、21世紀の若者らしく、テクノロジーを駆使して彼らなりのやり方で理性的に、そして世界の世論を味方につけるスマートな戦略をとっていることです。
野島氏が綴っているように、運動の背景には、香港が歴史的背景から持つ「境界性」や「二重性」という特殊な顔があります。
返還前の香港に2度いったことがありますが、その混沌としたカオスのパワーに圧倒された記憶があります。
特に、25年前、経済開発が急速に進展しつつあったけれども、まだ現在のような世界の工場ではなかった深圳経由で香港に入った時は、その色彩の洪水に頭が混乱して眩暈がしたほどです。
人間の欲望をコントロールしようとする社会主義の世界と、それを全面的に全開する資本主義の世界のコントラストを鮮明に感じさせたのが香港の街が持つパワーでした。
だから、今回の自治自由を求める若者たちの経済よりもイデオロギー的な要求が強い運動に、それまでの経済至上主義、政治には無関心であると思っていた香港像の異なる面を知ったのでした。
野島氏も書いているように、香港の若者世代は、豊かな生活を享受し、他の先進国の若者と同じITテクノロジーが生まれた時から日常にある新人類であるということ。
そのような彼らは自由を制限されるということに、強い拒否反応を覚えたのは当たり前の反応であったのだろうと彼らの行動の理由を理解できました。
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