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「いいかげん」の力

 料理研究家土井善晴氏の話を聞いて、なるほどと思いました。

 土井氏が料理番組で口癖のように言われる言葉「いいかげんでいい」には、

 和食における多様性や無限性を表現したものだということです。

 料理をつくることは、毎日変化する状況に対応することである。

 季節や素材の変化など、常に変化しています。

 それは、地球=自然⇔料理⇔人間という関係において、

 料理は、地球と人間の媒介となるものであると。

 ゆえに料理においては、それを調理する人よりも素材のほうが上。

 調理する人が心得ることは、素材に過剰なことでその良さをつぶしてしまわないこと。

 ゆえに料理には、作り手の「作為」が残ってはいけない。人間が残ってはいけない、自然をいかに残すかが問われている。

 つい過剰になってしまうのは、人の力で料理をおいしくしようとするから。

 けれども、料理は自然を引き立てること、素材を前面に引き出すことである。

 「いいかげんでいい」というのは、このような土井氏の哲学が込められた言葉であったのだと知りました。

 また、氏は「料理をすることは自立すること。自由になること。」と言います。

 料理をすることで、自分の家族の健康を維持させることで身を守り、それが幸せにつながるからです。

 「料理をすることは人間たらしめる。」と土井氏はいいます。

 それを引き出すのが「いいかげん」であるということだと教えられました。