茂木健一郎著「IKIGAI」は、茂木氏がかねてから宣言していた「英語で本を出す」を有言実行した本で、すでに世界数か国で出版されています。そしてこの本は英語で書かれて出版されるにふさわしい日本文化が生んだユニークな「IKIGAI=生きがい」について、外国人はもとより、日本人自身にも再考をせまる良書だと思いました。
IKIGAI=生きがいの概念は、英語ではずばり当てはまる言葉がないうようで、さらにこの言葉には日本人の美意識が深く染み込んでいて、日本人の生き方の根幹を支えていると茂木氏は考えます。
確かに私たち日本人は「生きがい」という言葉に強い肯定的な意味を持ち、日常会話でも頻繁に言葉に出します。
日本人(私も)は生きがいという言葉が指し示す概念が大好きなんだと思います。
しかしその大好きな「生きがい」について、この本で考察されるまで、改めて考えたことなかったなあというのが感想です。
茂木氏は日本人の意味する「生きがい」の構造について、それを支える5つの柱を立てます。
- 小さく始めること
- 自分からの解放
- 調和と持続性
- 小さな喜び
- <今、ここ>にいること
日本以外の文化で「生きがい」ににた概念はありますが、日本独特の「生きがい」は、他者の承認を必要としない自己の内部に深く根差した満足感に依拠しながら、それに加えて、その行為が決して他者を排除しない、他者を押しのけない、むしろ、他者の幸福実現へと向かう双方向のベクトルを持つということです。
日本人にとってそれは英語の「CALL(天職)」に近い概念だと思われますが、しかし、日本人にとってそれをすることが、特定の神に認められる、神からの承認を得るための報酬を目指した行為ではなく、茂木氏も指摘するように、時には対象相手を忘れるほど、行為そのものに没頭する=「フロー状態」を伴いそれが強い快感を生み出す作用があるということです。
そして「生きがい」の最もすばらしいところは、それを感じる人の状況を限定しないところです。どんな苦境でも、どんなに絶望的でも、必ず、生きがいを見出し、命を輝かせることが可能である。
この本は英語で書かれた(読む際には面白いことに日本語に「翻訳され」ています)日本文化の紹介のような形をとっているからか、日本人が気づかなかった、「生きがい」への強いリスペクトを改めて意識することができました。
母語以外の言語で考え、それを発信していくことの効用を改めて感じました。
もっと英語を勉強しようと。
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