哲学者榊原哲也著「医療ケアを問い直す」の中で「健康とは安らぎの状態」という言葉がありました。
この本では看護ケアの在り方を、患者とケアする人それぞれが構成する世界観の構造を、現象学的に解き明かし、医療現場で繰り広げられる「現象」に即して、「患者をトータルに診る」全人的ケアの在り方を探っています。
そして最後に現象学的に医療ケアを捉えた時、それが最終的に目指すべき健康とはどのようなものであるのかという問いの応えとして「安らぎ」という言葉で表現されていました。
健康というどちらかというと身体にスポットを当てがちな概念と、安らぎという心の在り方が結びつけられるのが新鮮な思いをしました。
現象学的に健康を定義する安らぎとは
何かが大事に思われ、そのことを実践できて、その実践に肯定的な意味を感じとれる。その時人は病気があって状態づけられた在り方をしていたとしても、「安らいで」いられる。このような「安らぎ」は、自分の置かれた状況の中で、自分の可能なことを見出して実行しているという体験。
健康と結びつけられる「安らぎ」は、静的な安穏ではなく、(たとえ病気の不自由さがあっても)生の自由の可能性を自ら押し広げていく行為なのだと思いました。その時、人は真の「安らぎ」を感じ、それが健康の状態なのでしょう。
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