女性料理ライターの草分けで91歳で亡くなられた岸朝子氏の三女が母の食生活を綴った「母・岸朝子が楽しんだ90歳のごはん」を読み、生涯食の大切さを追い求めて実践し続けた女性の生き様に感服しました。
まだ女性が第一線で働くことがなかった時代に、妊娠8か月で「主婦の友」の採用試験を受け、採用2か月で産休に入り、つぎつぎと4人の子供を産み育てながら、料理雑誌(私の高校時代の愛読雑誌「栄養と料理」)の編集長を務めた岸氏は、忙しい仕事にも関わらず、家庭内の食生活も栄養を考え実践し、そして何より家族に食の楽しさを教え続けてきました。
それは岸朝子氏が育った家庭(両親沖縄出身で、養殖牡蠣を発明した父親)の、何よりも食を第一に大切にするという信条を受け継いだものだったようです。
三女の紹介する母岸朝子氏の料理は、忙しいワーキングウーマン特有の、手早く、既製品や加工品使用にもこだわらず積極的に使うという合理的精神で、しかしながら家族の健康第一に考えた愛情あふれる料理で、どれも簡単につくれそうでおいしそうなものばかりでした。
生涯を通じて食に関わってきただけあって、自身の健康、特に老後の健康を、食によって実現するという強い信念が感じられ、栄養知識に裏付けされたバランスのとれた、そして老年においては、身体の衰えもふまえて調理の簡素化を考案し、最後まで同居する三女との料理を楽しみながら、亡くなる直前まで現役で健在であられたようです。
岸朝子氏の人生は、「あなたの体は食べたもので出来ている」を見事実践した人生であったと教えられました。
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