精神科医中井久夫氏が亡くなられました。享年88歳。
中井氏の精神科医としての患者に対する感性に感銘を受けて、その著作を全集からすべて読んで、
私の精神の血肉となっているような気がしていたので、体の一部が失われたような気がしています。
思えば、大好きでこれも血肉化していたコラムニスト小田嶋隆氏が6月に亡くなり、
本を読むこと=生きていることのような生活を送っている私にとって、
心の支えとなってきた大好きな作家が亡くなり、もう新たな声を聴くことができなくなったことに大きな喪失感を抱えています。
どうしてこんなにも心を病んだ相手の心に寄り添うことができるのか?
もともとウイルス学者としてのキャリアをスタートさせた中井氏は、自身の結核発病をきっかけとして医学部に天部し、精神科医となります。
一見エリート医師の道を歩んできたように傍からは見えますが、実は中井氏自身が不器用で、繊細で、生き辛さを感じていたのではなかったからからと、氏の著作を読みすすめていくにつれて感じるようになりました。
精神を病んだ患者さんは、中井氏自身を投影したものであり、その親密さが深い洞察となって治療にいかされていたのではないかと思います。
そのように患者と同化した身でもって、医師として科学者としての冷静で客観的で透徹した視点で治療にあたる。
激務の業務の中で、医師としての使命を常に持ち続けられることは、本当に優しい精神をお持ちであったのだろうと。
それゆえにセンシティブで傷つきやすさも抱え持って、苦労されたのではないかと危惧しています。
ご冥福をお祈りします。
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