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じっくり活字を追えない

 メリアン・ウルフ著「デジタルで読む脳 紙の本で読む本」は、デジタル媒体で読字することが脳に与える影響について書かれています。

 私は毎日1冊本を読む習慣があり、自他ともに認める紙媒体の活字人間なのですが、そういえば、「活字人間」という言葉が想定するのは、紙媒体の本を多読する人であることに気づきました。

 ウルフ氏によると、本を読まないと批判されている現代人は、意外にも、紙媒体の文字を読んでいた時よりもデジタルの読字量は圧倒的に増えているようです。

 ただし、文字に対処するときの姿勢が顕著に異なってきていて、それが特に発達中の子供の脳にどのような影響を与えるかが今研究中だそうです。

 ウルフ氏自身も重度のデジタル脳になっていたことを自覚して驚いたようですが、デジタル媒体の読字ni

どっぷりと浸っている現代人は、紙媒体で書かれた文字を文脈に沿いながら、その世界に入り込み浸ることが困難になってきています。

 読字のスタイルが、次々と変わる場面を追い、重要なワードだけをピンポイントでピックアップして文脈をつなげ、様々な場面を併用しながら文字を読み進めるーつまり、「せわしない」読み方しかできなくなってきているというのです。

 私は読字のかなりの部分を紙媒体で占めているのですが、最近自覚するのは、紙媒体の本を読むときも、なんだかイライラして、もどかしさを感じて、書かれていることをじっくり理解しようという気持ちが起こらないということです。

 きっとそれはデジタル媒体の文字を読む時間が増えたことに脳が適応しつつあるからなのだと思います。

 現実の世界とは異なる文字で表現されたことに触発されイメージされた世界に飛んで、その中で、登場人物とともに、喜び、悲しみ、そして苦悩する、もしくは、筆者が提示する課題を考える。。。

 そのような読書の喜びが軽減されつつあるのを、年のせいで集中力が持続できなくなったことだけではないとあらためて意識しました。