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首は命の要所

 脳神経科医の松井孝嘉氏の本の中で「首は命の要所」という言葉がありました。

 頭の重さは平均して6キロ(Lサイズのスイカ並)もあり、起きている間中それを支えている首に多大な負担がかかっているということです。それに加えて現代人の生活はPC、スマホなどの場面を「下向き」の姿勢で長時間見る生活を送っているため、両手を伸ばして6キロのスイカを支えているのと同じ負担が首の後ろの筋肉にその間かかっているということです。

 首には脳と体を結ぶ血管や神経が筋肉の下に通っており、筋肉が疲労し、老廃物が溜まって、それが排せつさせないでいると、やがて筋肉は固くなり、柔軟性がなくなり、血管や神経を圧迫してそれらの循環を悪くしてしまいます。

 特に松井氏が警告しているのは、首を通る神経の中でも自律神経の働きが阻害されることです。自律神経は交感神経と副交感神経の二つがあるのですが、松井氏はそのうちでもとりわけ副交感神経のはたらきが衰えることを訴えています。

 氏のいう「下向き病」=自律神経失調症副交感神経のはたらきが衰えることにより、シーソーバランス関係にあり、現代人のストレスフルな生活で活発になっている交感神経の過剰な働きを抑えることができなくなっていることが、交感神経の暴走を引き起こし、自律神経失調症の症状を生み出しているということです。

 従来の自律神経失調症の治療は、もっぱら交感神経を抑える治療ばかり行われてきましたが、本来的な治療は副交感神経の働きを高める治療(もしくは予防)でなければならず、それには投薬も必要ないとのことです。

 一つの機構を調節している二つの相反する働きのうち、昂進している働きをダウンさせるのではなく、衰えた抑制の働きを高める、つまりブレーキをはずすという考えは、ノーベル賞を受賞した本田祐氏の免疫細胞PD-1の働きとも通じ、それがオブシーボのがんに対する画期的な効果を生んでいることと鑑みて、松井氏の考えは有効なのではないかと確信しました。

 それで早速氏の推奨する「555体操」をやりました。

 私の常ですが、何でもやりすぎるところがあり、一日3回を毎日持続させるというところを、一日に何度もやったところ、翌日首が痛くなりました(笑)。きちんと手で支えなければならないところを、面倒なのでそれをしなかったことが原因だと思われますが、筋肉痛になったということは、自覚はないし、本の「下向き病」に当てはまる項目が一つしかないのにも関わらず、実は首が疲れて硬くなっていたのだなあと気づきました。

 とりあえず氏が提唱する2週間、体操と首を温めることを実践してみて、副交感神経の働きが高まるか試してみようと思います。