動物人類学者で「サル学」の権威河合雅雄氏が先日97歳で亡くなられたのを追悼して、2003年に氏が語ったラジオ講座を聴きました。
幼少の頃から病弱で、学校に通えなかったこともあって勉強では他の優秀な兄弟(心理学者故河合隼雄氏を含む男6人兄弟)と比べて劣等生だったそうです。
けれども学校に通えない分、自宅で本を読みふけり、また故郷の丹波篠山の大自然の中で野山を駆け回り、大好きな動物たちと戯れて過ごしたことが、後に氏が動物学者となる際の豊かな土壌となったようです。
雅雄少年が勉強ができなくても劣等感を抱くことがなかったのは、ご両親が決して他の兄弟を比べたりはしなかったこと、雅雄の個性を尊重して、それを褒めてくれたことだと氏は回想しています。
そして動物を通して人間というものを見つめ、動物から受け継がれてきた「育てる」という本能について深い考察を得られたようです。
氏は「教育」という概念について、「教育」の「教」は文字通り「教える」ということで、より知識を持っている者が知識を受け渡すことで受け身なのに対して、「育」には「育つ」と「育てる」の二つのベクトルがあり、「育つ」には自動的な意味を含むということです。
「育つ」ためには、目的のない自由なゆったりとした時間が大切だと言われていました。
そのような無目的な時間の中で、ゆっくりと育つものを各々の子供がみつけていくのを大人が見守り続けなければならないと。
そのような豊かな子供時代を糧に動物学者として大成された河合氏の人生がその効果を証明していると思いました。
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