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見えないものに対する不安

 新型コロナウィルスの国内感染経路が2次感染のレベルに達してきました。日本人は「鎖国」のDNAのなせる業か、(本当は十分でない)水際作戦に対して、国を閉ざし繭のような安全で安心な国土のイメージを抱いてしまい、中国国内の感染拡大ニュースも他人事のように感じていました。

 このような場合のマスコミ報道の仕方は、福島原発事故の時にも感じたのですが、視聴者が知りたい情報を冷静に判断し伝えるというよりも、伝える側が興奮して煽っているような印象を強く感じます。

 感染者の数を伝える時も、その数は感染様態においてどのような意味を持っているのか、それをどう判断すればいいのか、実際に視聴者が知りたい情報はほとんど与えられていません。

 だから福島原発事故の時にも感じたのですが、様々な意見が検証もされずにデマのレベルでツイッターやSNSで流され、流言飛語が飛び交い、その情報に触れた人々に恐怖のパニックをおこさせているように思います。

 毎朝ドラッグストアの開店前にマスク購入の行列が並ぶのも、放射能の影響を恐れて東日本の野菜の購入が控えられたり、一部の物品が(放射能汚染を防ぐとして)買い占められた現象を彷彿させます。

 感染予防にはマスクはほとんど効果がなく、手洗いを徹底することに尽きることをもっと周知させることがマスコミの役割ではないかと思うのですが。

 放射能やウィルスなど見えないものに対する不安は、まさに人間が頭の中で作り上げた概念に対する不安でもあります。不安の実態を正確に明らかにし、それを「正しい」恐怖として把握して初めて、その恐怖に対するリスク管理が可能になります。

 そのためにもマスコミは、視聴者が必要な対策がとれるように、冷静で客観的で有益な情報を責任をもって流してほしいです。

 また受け取る側もその情報の真否を常に意識して、自分自身の心の中にある「見えないものに対する」不安がどこからくるのか、もしかしたら、別の潜在的なものではないかということも考えて、自身の不安の正体も探っていく必要があるように思います。