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民主主義の脆さ

 ジョー・バイデン氏がアメリカの大統領に就任して、ようやく悪夢のようなトランプ時代の幕が下りてホットしています。

 4年前、トランプが大統領に当選したと知った時の、唖然とし、茫然自失になってしまったことを思い起こしていました。

 21世紀のアメリカにおいて、めちゃくちゃなプロパガンダを振りかざし、幼稚で自分=自国中心的な政策の数々が実際に実行される様を見て、民主主義という政治が「最悪でもないよりまし」どころではないのだと、改めておそろしくなりました。

 トランプ支持者の連邦議会襲撃事件も、あの民主主義国家を標榜するアメリカで起こった出来事とは信じられませんでした。

 池内紀氏の「ヒトラーの時代」を読んで、ヒトラーを台頭させた当時のドイツの状況と、トランプが登場したアメリカの状況が少なくともトランプ支持者にとっては同じような状況であったということを痛感しました。

 それは踏みにじられた自尊心が結束したときの負のエネルギーのすごさです。

 当時のドイツ国民は第一次世界大戦で敗戦し、戦勝国から莫大な賠償金を課され、驚異的なインフレに苦しめられていました。生活の苦しさに加えてなによりも、国民の自尊心が大いに傷つけられていました。

 それをなだめ、失われた自尊心を回復させるために、ユダヤ人というスケープゴートをこしらえターゲットにし、執拗に攻撃対象としたのがヒトラーでした。

 当初泡沫候補として政権中枢にいた人ものたちは政敵を追い払うために利用するだけとバカにして軽く思っていたのに、それに飲み込まれてしまっていった。

 トランプ登場の際に、アメリカエリート層が、彼を指示する層のルサンチマンを、バカにして鼻をくくっていたことが、ヒトラーと同様にトランプを台頭させる要因になったとも言えます。

 その後4年に渡るトランプのツイッターによる暴言や陰謀論は、まさにヒトラーが当時の最新のメディアであるラジオで熱弁を振るって国民を煽動した様と全く同じだったと思います。

 トランプ時代の幕が下りる瞬間に、あの連邦議会襲撃が見せた醜悪な様相が、民主主義と言われる政体が、いかに脆く危ういものであるかを再認識しました。