「これはレモンの香りですか?」
堀端で乗せた客からの問いかけに、**さんはにっこりとして振り向きました。
「いいえ、夏みかんですよ。田舎の母が昨日送ってくれました。香りを届けたかったのでしょう。」
と、裏覚えながら、小学校の教科書に載っていた、あまんきみこ著「夏みかん」の台詞を(正確ではないですが)覚えているのに我ながら驚きました。
50年近く前の当時は、早春の柑橘類と言えば、現在の甘夏ではなく改良前の夏みかんでした。
皮が厚く、かなりすっぱさと渋さの混じった素朴な味は、現在の甘さ嗜好の消費者には合わないようで、
市販にはほとんど流通していません。
故郷の萩市の市の花な夏みかんで、明治時代元武家屋敷で失業対策として夏みかんが植えられたことをから、
今でも萩の初夏は「レモンのような」の香りが漂っていたのを懐かしく思い出します。
そして何より、マーマレード(これも萩の特産)にするには、この夏みかんの厚みのある皮でないとうまくできません。
ここ、豪徳寺で農家の直売所があり、ちょくちょく新鮮な野菜を求めているのですが、
去年、この時期に販売所に夏みかんが置かれているのを見つけました。
販売所のすぐそばに夏みかんの大きな木が一本あり、そこから収穫されたようです。
さっそく求めて、あの酸っぱい果汁をほおばり、食後の皮と袋を用いてマーマレードを作りました。
なかなかの出来で、来年もとおもっていましたが、
いつ夏みかんを収穫されるのか分からず、今年は手に入れることができるかなと心配していました。
久しぶりに機能直売所を訪れたところ、夏みかん数個が入ったビニル袋が山盛りになっているではないですか。
早速二袋求め、そのどっしりとした重みを感じて、
ビニル袋超しなので、香りはしなかったですが、
これで、今年もマーマレードを作るぞ!と、
コロナ禍でも、春を感じられることを求めて過ごそうと思いました。
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