佐藤眞一編著「ほんとのトコロ認知症ってなに?」は、阪大が学際の垣根を越えて、認知症という「病」に取り組んだプロジェクトから生まれた本です。
このプロジェクトでは、認知症を身体の「病」として限局的にとらえるだけでなく、認知症が人間を人間たらしめている本能であるコミュニケーションが障害される病であることから、認知症を社会的な障害と定義し、医療、福祉、地域社会との連携の在り方など、各分野のエキスパートが認知症という現象に共に取り組んでいる軌跡が集められています。
その中で、そもそも認知症は「病」か?という問いかけがなされます。
誰しも老い得る。治療できずに必ず死に向かう。一人として症状が一致しない。認知症という病は果たして「病」なのか?
認知症とは、身体の機能を失っていきながら意思を表現できなくなるすべての人がたどりつく老化現象そのものであり、「死ぬことが運命づけられたすべての人がかかる病」ととらえることができる。
認知症と老化の間には境界がない。
誰もが老い、死んでいく。その過程の一つのバリエーションとして認知症を捉えること。それゆえ、認知症の人が抱える困難を、家族をはじめ地域の人たちみなが、自分自身も必ず経る老いの当事者として認知症の人をサポートしていく視点をもち、工夫して共に生きていくことが、社会的現象に困難を抱える認知症の人だけでなく、何らかの困難を抱えている人すべてが生きやすい社会を実現するための契機となることをこのプロジェクトは目指していると感じました。
認知症とうまく付き合う方法は
「予防」、「医療」、「介護」、「自律」、「協力」
これら5つの項目において、それぞれのエキスパートが認知症の人が出会う困難に、当事者の主体性に寄り添って支えていく体制が整えれば、誰もが経る、老いのバリエーションとして認知症に対処することができるようになるのではないかと、遠距離で一人暮らしで、認知症初期と診断され介護認定1でデイケアに週二回通う母は、今のところ「医療」、「介護」、「自律」、「協力」が何とか満たされていることを実感しています。
コメントをお書きください