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認知症の投薬について

 介護ジャーナリスト東田勉氏の「認知症の真実」を読んで、現在認知症初期の母の認知症「治療」について考えさせられました。

 母は1年前に脳神経外科でMRIや認知機能テストを受け介護1の認定を受けて、ケアマネージャーの方とも相談の上、週2回のデイケアとヘルパー訪問2回アリセプト投薬を受けながら、実家で一人で暮らしています(3か月おきに私が帰省)。

 1年前に比べて物忘れが進行し、めまいや物事に対応するのが困難になってきていることもあって、電話するたびに「疲れた」を連発していますが、どうにか日常生活は送れています。

 認知症と判定されてアリセプトを投与をはじめてから目に見える効果はないですが、進行性の病気である認知症なので、症状が急激に悪くならないだけでも薬が効いているのかなとは感じています。

 けれどもこの本によると、アリセプトは特に陽性(過活動)の認知症患者の症状の悪化をもたらし、介護を困難にしている現状があげられています。その原因には、認知症は不可抗力の老化現象であるにも関わらず精神疾患と同じく「病気」と捉え、治療するという国がそれまでの「呆け」と捉えて治療困難な老化現象であるとしてきた指針を改め、積極的に治療の対象としたからだと東田氏はいいます。

 認知症は病いではなく「障害」だと捉え、そうであるならば、生活上の困難を介護によって補っていくというやり方、もしくは症状がひどい場合は薬を投与し、国の指針(効かなければ増量していく)とは逆に薬を軽減しつつ症状を抑えていくという方針が適しているのではないかということです。

 母はもともと楽観的で社交的な性格なので、認知症になっても積極的に人と交わっています。攻撃的なところも抑鬱なところもないので、アリセプト投与による副作用は今のところ認められていませんが、果たして効果があるかないかわからない薬を飲み続けさせるのはどうかと読んでいて不安に感じました。

 できるだけ長く寿命まで現状を維持できればいいと希望的観測を持っていますが、投薬のことなど、認知症については治療者側も不明なことが多く、治療や介護の方針が混乱しているのが現在の認知症医療の現場なのだとよく割りました。それゆえ家族が認知症の知識を得て、当人が最もふさわしい終末期を迎えられるようにしなければならないと改めて思いました。