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「認知予備力」を蓄える

 アルツハイマー病の原因とされる「アミロイドβカスケード説」は、長年の間アミロイドβがの脳神経細胞内に蓄積され、それが次第に脳神経を死滅させていくことで、認知症の症状が引き起こされるとされ、現在認知症の有力な説となっていますが、アメリカで100歳近い高齢のシスターたちの脳を死後解剖し、脳のアミロイドβの侵され方と、生前の彼女たちの認知度に相関関係がなかったことが判明したという研究があります。

 生前みなの中心的存在で死の直前まで公的な活動を積極的にしていたシスターの脳は多くの部分がアミロイドβにo侵されていた一方、介護を受けなければ生活できないほど認知症が進んでいた別のシスターの脳はそれほどでもなかった。

 この事実から、実はアミロイドβはアルツハイマー病の原因の原因ではなく、結果ではないか。そして認知度を決定するのは、アミロイドβ以外にあるのではないかと考えられました。

 そのひとつが「認知予備力」です。

 研究対象となったシスターたちの多くが入信後も大学で博士号を取るなど、当時の女性の平均と比べて活発な知的行為をしていました。認知症の症状が進んだシスターはそのような経験がありませんでした。

 そのことから、たとえアミロイドβによって一部の脳神経細胞が侵されてても、

 知的な活動に従事することで、新たな脳神経のシナプスが形成されたり、シナプスの活動が高まり、豊かな神経ネットワークが構築されることが、加齢によって神経ネットワークが崩壊し始めても、神経ネットワークが高められたり、別の神経ネットワークが構築されるのではないか。

 しかしそのように知的活動によって認知症の症状の発現が猶予されていても、だんだんアミロイドβの浸食によってやがては認知症を発症し、そして発症した後は、かなり急速に症状が進むそうです。

 しかし認知症になっている期間が短くなることで、生前のQOLが保たれる時間が長くなるのだから、それはそれで知的活動の効果があるのではないかと思います。

 脳も体の一部なのだから、廃用性による機能低下を防ぐために、適度な負荷をかけ続けることが必要なのでしょう。