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脳が食べる

 鳥居邦夫氏の「太る脳、痩せる脳」をとても興味深く読みました。

 味の素の研究員であったと鳥居氏は、「うまみ」の味覚の研究をはじめとして、栄養素が脳にどのような影響を与えるのか長年研究されてきたそうです。

 「うまみ」は、様々なアミノ酸の持つ複合的な栄養素の化学物質がシグナルとして脳へその情報が送られ、私たちはそれを含んだ食材を摂取したとき、舌にある味覚細胞から栄養素を吸収して「うまみ」として感じるようです。

 グルタミン酸は脳神経でもっもと使われている物質で、以前はグルタミン酸を多く含む味の素を食べれば頭が良くなるといわれていたようですが、それはないのですが、自律神経の働きにも影響を与え、私たちの体の恒常性のバランスを維持する働きがあるようです。

 そして昆布などに含まれるグルタミン酸やしいたけなどキノコ類に含まれるグアニン酸など植物由来の成分と、鰹節など肉由来の旨味が合わさると、旨味が数十倍になるようです。

 私たちは食べるという行為によって、植物、動物を問わず他の生き物の体の一部を自分の中に取り入れるのですが、そのままの構成では私たちの体にとっては異物として認識されてしまいます。

 そこで消化というプロセスでグルコース、アミノ酸、脂肪酸などに分解されて吸収されますが、その際にビタミンやミネラルなども一緒に吸収され、私たちが生きていくための体の構造や機能を生み出しています。

 異物を体の中に取り入れて、それを体の営みのために活用し、体の恒常性を保つために、脳は取り入れた栄養素をその都度分析して、その濃度の調節を行っているようです。

 生存の最も基幹となる生きるエネルギーを生み出すために、食べることが私たちにヒトにとって、最大の快楽であるように脳が「仕組んでる」精巧な営みに驚くばかりです。