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老化は病気?

オーブリー・デグレイ著「老化を止める7つの科学」を読んでいるのですが、デグレイ氏は「老化は病気」だと捉え、他の病気と同じく治療可能で、その症状を完全に取り除くことができると捉え、生理学の考えではなく、現在開発されている最先端の遺伝子「工学」の技術を利用して、老化を止める方法を具体的に提唱しています。

 デグレイ氏の発想が面白いのは、氏がコンピューターのプログラマーで、妻が勤務する遺伝研究所のコンピューターソフトの仕事に従事しているうちに、技術者の視点から老化を止める方法を考え、生理学的な学問トレーニングも受けたことはないのに、いきなり機能不全に陥ったミトコンドリアについての博士論文を書き、博士号を取得したことです。

 氏の老化に対するアプローチは、従来の病(老化現象を含む)の研究が、基礎科学的アプローチ、つまり、どうして病が生じるのかのメカニズムの探求であるのに対して、氏はあくまでも工学的アプローチ(なぜそうなるかはわからなくても、目の前の現象に対して、これまでに開発された技術を応用して新たなものを作り出す)で、老化現象を捉えてる視点をとっていることです。

 身体の老化とそれにより引き起こされる数々の疾病は、7つの現象が原因で生じると考え、そのそれぞれに工学的アプローチをし、アンチエイジングが、すでに老いた身体に対して、これ以上老化が進まないようにするという現状維持を目的とするのに対して、氏は老化を止める、それも人生がベストで充実されているとされる40代~50代の身体の状態を保つことを目的としていることです。

 氏が挙げている老化を引き起こす7つの原因とは

  1. 細胞外のゴミ
  2. 細胞の老化
  3. 細胞外架橋形成
  4. 細胞内のゴミ
  5. ミトコンドリアの突然変異
  6. 細胞の喪失

 そのそれぞれに生理学的原因はいまだ解明途中ですが、現象=症状に対して遺伝子工学の技術を駆使して老化を引き起こす原因を取り除く方法を提唱しています。

 その中には臨床応用に至っているものもありますが、まだ構想中のものあり、動物実験の段階ですが、遺伝子工学の実験のトライアンドエラーで取り組んでいる様子は、人体は細胞という素材からできている構造物なのだなあと感じ、知るだけでなく、現実に生み出す工学のアプローチは、老化という人にとっての究極の難問に取り組むブレークスルーになるのかも知れないと思いました。