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三回忌

 昨日は13年間治療続けて、2年前に91歳でお亡くなりになった患者さんの三回忌でした。

 晩年10年近く足が不自由でしたが独り暮らしをされていて、

 同じ敷地内に二人の姪御さん一家がお住まいで見守っていらっしゃいました。

 戦前の浅草育ちでお話し好き、定年まで省庁で勤め上げたキャリアウーマンの先駆けでした。

 東京大空襲を生き延びたその体験談を繰り返し臨場感あふれる語り口で話してくださり、

 戦前の浅草の賑わい、戦後復興期の東京の発展ぶりも、たっぷりと(何度も話されるので、暗記しているぐらい)聞きました。

 おしゃれで、新しもの好きで、おしゃべりが大好きで、陽気な性格でいらして、だれとでもすぐに友達になられていました。

 もともと買い物好きだったようですが、晩年は足が不自由になられて外出がままならなくなって、

 けれども私が勧めた生協の宅配のカタログを毎週2時間かけてじっくり選ぶのを楽しみにされていて、

 亡くなるまで好奇心が衰えていませんでした。

 同じように独身である私は、人生の先輩として彼女の生き方に多々見習うことがあり、

 いろいろ教えられることがありました。

 なにげない、小さな台所用品などの小物をよくプレゼントしてくださり、

 彼女が亡くなった後も、毎日それを使うたびに、彼女のことを思い出しています。

 平成から令和に変わるその日に亡くなられて、

 姪御さんが

 「おばちゃんは、きっと忘れられないように、この日を選んだんだ。」と言われていましたが、

 実際に、そのように、父親の命日も忘れがちな私が、彼女の命日をしっかり覚えています。