サリンジャーを描いたビデオ「ライ麦畑のサリンジャー ひとりぼっちの反逆児」を見て、
50年以上引きこもり続けた作家と、現在の私たちの感染症による自粛生活を比べてしまいました。
映画では、「ライ麦・・」が生まれるまでのエピソードとして、サリンジャーが第二次世界大戦のノルマンディ上陸作戦などの激戦に参戦して、深い戦争トラウマを負い、ドイツの精神病院に入院したことが取り上げられて言いました。
最初「ライ麦・・」を読んだとき、「なんだか不思議な小説だな」と感じただけで、ホールデン少年が、精神を病んでいて、精神病院を脱走してクリスマスのニューヨークを彷徨い、自宅にいる妹と会うということがわかりませんでした(小説では具体的に触れていないので)。
けれども、その指摘をしって小説を読みなおすと、ホールデン少年の狂気が感じられて、
息苦しさも感じられました。
サリンジャーはその後、仏教思想に深く心酔し、熱狂的なストーカーファンやマスコミから逃れるために、人里離れた山荘に住み、自ら塀を作って引きこもり、離婚したようです。
「フラニーとゾーイ」、「ナインストーリーズ」を出版した以降は、作品を出版することはありませんでした。
彼が引きこもれば引きこもるほど、世間は彼を奇異な目で追い求めて、益々引きこもる。。。。
成功後の彼の人生は、世間と孤絶した世界で生きたようでした。
父親との確執、信頼していた師の援助が得られなかったことなど、
もともと人間関係構築にトラブルを抱えていたことも描かれていて、
それに加えて戦争トラウマを病んでいて、
小説を書くことは彼にとって唯一の精神的なリハビリだったのでしょう。
現在のコロナ禍のために、引きこもりを強いられている状況から、
世間の雑音から逃れたくて引きこもり続けたサリンジャーを捉えると、
不思議なことに、親近感がわいてきました。
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