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性別って何なのだろう?

 能町みね子著「家賃ですけど」を読んで強く感じたのは、「性別って何なのだろう?」という思いです。

 私は不覚にも能町みねこ氏をNHKラジオ番組「すっぴん(アンカーの藤井綾子アナの大ファンで、この度8年続いたこの番組が終わってしまってロスに陥っています)」の水曜日のパーソナリティとして知りました。

 「誰だろう?」と思い、「すっぴん」のホームページの写真を見た瞬間「オカマさん?」と、その厚化粧(失礼!)にとっさに感じたのですが、番組では氏が性同一障害の診断を受け、性転換手術をして男性→女性へとなっていたことなど触れることはなく、おちついた声で(今から思えば女性にしては低音だった)、氏独特のユニークな感性で、音楽(とっても私の趣味と合う)、相撲(解説もしていたのですね)、「ニッチな旅紀行」など、最後まで、知らずにいて、番組が終わって「能町みね子」でググって初めて知ったのでした。

 「家賃ですけど」は、牛込の築40年の昭和の匂いの濃い能町氏の好みのアパート暮らしのあれこれを綴ったもので、そこに暮らした20代後半の時期は、ちょうど氏が女性としての性を選択した時期とかさなり、一度目に住んだときは男性として、女性として生き始めたとき、風呂なしのその部屋では(銭湯にいくことが難しいので)暮らしが不自由なため転出したものの、そのアパートの魅力に惹かれて、風呂ありの部屋が空いたタイミングで戻り住み始め

、大家さんもそのことを了承し受け入れて、大好きな昭和の下町情緒あふれるこの町での暮らしがつづられています。

 その後、性転換手術を受けて心身ともに女性として生き始めた様子がつづられていますが、その時期に持病?の心臓病も悪化、手術、入院など、たぶん、性の転換という能町氏にとってそれまでの人生の中で抱えてきた「居心地の悪い」状態を、様々な人間関係のリスクがありながらも、これからの人生を主体的に選択することの相当なプレッシャーが無意識のうちに身体を蝕んでいたのではないかと想像されます。

 しかし、ラジオという、人間がヒトを判断する感覚の大部分を占める視覚がない状態で、私は最後まで、能町氏のセクシャリティの特殊さに全く違和感を感じませんでした。それは氏が抱く性に対する違和感を含めて、生きていることの「違和感」に対して無意識に共感していたからかもしれません。そしてまたそれはアンカーの藤井綾子アナが、ごく自然にこだわりや偏見なく、能町氏に接していたからだとも思います。

 能町みね子の在り方から、「性別ってなんなのだろう」と改めて考えなおしました。