イギリス人女性で57歳で若年性アルツハイマー病を発症した女性の手記「今日のわたしはだれ?」を読んでいます。
シングルマザーとして苦労して二人の娘を育て上げ、イギリスの国家保健相の事務員の管理職として、高い能力と統率力を認められ、ジョギングが趣味で健康そのもので、忙しくも充実した熟年期を送っていた日々に、少しずつ影が差してきました。
なによりも抜群の記憶力と判断力が自慢だったのに、頭に霧がかかったようになって、頭の回転が遅くなり、数々の業務上の失敗を繰り返す日々。何かがおかしいと思いながらも、深層を知ることが怖くてずるずると医療機関にかかるのをためらう不安が募る日々。
ジョギングの際に意識を失い転倒したことがきっかけて医療機関で検査したところ、若年性のアルツハイマー病初期であることが判明したときの絶望感と不安と恐怖に陥った日々。
娘たちに自分の介護をさせまいとして、症状が進行した後は介護施設に入所することを決意し、娘たちの了承を得、職場の理解と協力を得るために、自分の症状を開示したこと。
人一倍努力し、その結果として業績が認められ、周囲の皆から頼りにされてきて、自立した女性として自他ともに自覚していた自分が、判断ができなくなり、日常生活の基本的なことにも困難を覚えるようになり、そしてその症状がどんどん進行していく様を、当事者内面から真摯に語られていて、その不安と恐怖が伝わってきます。
それは自分の世界が崩壊するような実存の恐怖だと思います。
現在87歳の母も4年前から認知症の症状が出てきて、現在、5分前の出来事も思い出せなくなっています。
日常生活はデイケアやヘルパーさんや配食などの助けを借りて、健気に一人暮らしをしています。
母の世界がどのようになってきているのか知ることはできませんが、
この女性が味わっている危機感は、母をはじめとするすべての認知症の人が経験したことであると思い、
少しでも彼らの世界観を理解したいと思いました。
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