岩波文庫「中国の歴史 シリーズ2」を読んでいて、「先憂後楽」という言葉がありました。
実は同じ言葉を今日朝日新聞のウェブ版で樋野興夫氏が今回のコロナ禍について、為政者の必要な姿勢として挙げていた言葉だったので、偶然に驚きました。
樋野氏はこの言葉を、人の評価は余裕がにじみ出ている表情で決まることのたとえとして、幕末の勝海舟が人を惹きつけた理由として、勝の余裕の理由として彼の先を見てしっかり準備していることからくるものとしていました。
中国で生まれたこの言葉は、為政者の墓に刻まれていたもので、皇帝はいつも民のことをいろいろ憂いて政をしている。それは後に民が幸せになってその姿をみることが楽しみであるからだというような意味だそうです。
樋野氏は現在の政治家の態度はその逆で、選挙民のご機嫌をとって選挙に有利なような政策ばかりを打ち出し、そのつけを後世に残して平気でいる、いわば「先楽後憂」だと。
ヒトの本能として初期バイアス(目の前のことを過大に評価する)があるので、将来起こりうる問題を過小評価してしまいがちです。私自身も特にその傾向が強く、どちらというと、今さえよければというほうですが、今回のコロナ流行に対しては、「先憂後楽」の政策をとった政府の方が、コロナ流行をうまく封じ込めているのを目の当たりにして、将来に起こりうることを正確に予想し、それを現在のこととして重みをつけて感情を動かし、それに備えた行動を促すように努めなければならないと強く感じました。
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