長濱陽二著「自然免疫を高める」を読んで、自然免疫こそが、予防および未病を治すの原理だと改めて実感しました。
免疫といってイメージするのは「抗原抗体反応」の、病原体と人体の抗体が鍵と鍵穴のようにカチット組み合わされるもので、「免疫力が高い」というのは、その機能が優れているように思っていました。
けれども、免疫には自然免疫と獲得免疫があり、前者はアメーバなどの食細胞による病原体などの食作用によって、後者は上記の抗原抗体反応を司るという、二段階になっています。そして今までは免疫の主流と思われていたのは後者の方でした。
しかしこの本では自然免疫の進化の過程がわかりやすく解説していあって、すべての生物の細胞一つ一つに備わっている機能で、その起源は獲得免疫が脊椎動物以降に進化したものに対して、自然免疫はすべての生物が備えている病原体に対する防御システムで、こちらの免疫の本家本元であるということがわかりました。
予防医学の本質は自然免疫を高めることで病気にかからない体質をつくること。
自然免疫のしくみをよく理解して、それが効果的に働くようにすること、それが病原体に対する抵抗力を高めることであり、予防医学につながることなるのです。
そして自然免疫のしくみは病原体などの外部の異物と闘うだけでなく、細胞の内部で生じた老廃物や欠陥品を速やかに死滅させるアポトーシスの働き、またそれが過剰になったときに自己免疫疾患が生じることと関係しています。
これが今急速に研究が進んで臨床応用もなされている、がん(自己細胞から生じているのに異物となっている)の免疫療法や、自己免疫疾患治療の原理となっているのが、この自然免疫のしくみです。
ここ20年ぐらいで自然免疫の研究が急速に進んできているようです。自然免疫の仕組みがさらに明らかになってくると、病気になってから治療するという現在の医療システムから、予防を主流とする医療へと転換していくと思いました。
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