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ステイホーム回顧

 東京都は歌舞伎町のクラスター発生にも関わらず、緊急事態宣言解除の段階を徐々に広げていって、今週からほぼ宣言なしの状態にまで解禁されるようです。

 市井の様子も、人々のマスク着用と店舗のビニールカーテンの防御以外、緊急事態宣言以前と変わらない日常が戻ってきたような気がします。

 経済活動はこれからコロナの影響が出てきて厳しい状況が続くと思われますが、緊急事態宣言の際買い物で外出したさいに見られたマスク越しの人々の不安や厳しい視線がなくなり、

「普通が戻ってきたのだなあ。」とほっとする気持ちに包まれます。

 けれども、「WITH CORONA」であることには変わりなく、100%解放された精神状態になることはもはや不可能で、感染予防を第一に留意した行動を常に意識しなければなりません。

 私自身に関して言えば、治療を再開して徐々に患者さんが戻ってきてくださり、元の生活パターンが始まっています。

 けれども時折、あの緊急事態宣言の2か月間の「ステイホーム」の時間を懐かしく思い起こしています。

 一人暮らしということもあって、電話で実家の母と1週間に数回、親友とメイルで1週間に1回ぐらいやり取りするだけで、実質全く人に接しなくて2か月過ごしたのですが、ジョギング、ウオーキングは規則正しく続け、午後はひたすらお借りした「ローマ人物語」全15巻を読みふけ、ルーティンですが精神的に肉体的にとても充実した時間を過ごすことができ、あの時間が懐かしく思われるぐらいです。

 ステイホームのリアルタイムでは「このような体験は、これから病気などで入院生活を送らざるを得なくなるかもしれないことの予行練習になるかもしれないし、もう二度と体験できないことかもしれない。だから精一杯、一人の生活を満喫しよう。」と心掛けて、情報はラジオのニュースを朝夕2回聞くだけと、ネットで新聞記事をチェックすることだけで事実上シャットアウトしていたので、世間の動向から隔絶された「おこもり生活」を送りました。

 佐藤優氏が500数日の拘置所生活の間、ひたすら本を読み続け、その集中した時間を自由になった後にも再現したくて仕事部屋を拘置所の一室のように改造したそうですが、その気持ちがわかるような気がします。

 もともと内向的傾向のある人は、引きこもりがデフォルトで、できれば人との関係に「煩わされる」ことなく、自分一人の世界にひたすらこもることが苦痛というよりも快感でさえあるのだと思います。

 コロナ第二波で再びステイホーム状態が再現されるかもしれませんが、不謹慎だとは思いつつ、そうなってもいいかなあとのんきに考えています。