内澤旬子著「ストーカーとの700日戦争」を読んで、その中でストーカーとの闘いに、警察や司法との関係の中で行き詰まりを感じていた内澤氏がその著書を読んで、専属のカウンセリングを要請した小早川明子氏の著作「ストーカーは何を考えているのか」を読んで、今まで謎であったストーカーの心理がようやくわかりました。
「どうして(一応)市民生活を送れるぐらいの分別のある人が、つまりストーカ被害者だけに、殺人をふくめ尋常ならざる行為が向けられるのか。彼ら(彼女ら)が、ストーカ行為に「走っている」際の心理はどういうものなのか」というものでした。
500人以上ものストーカ容疑者と面談した経験から、小早川氏は、彼らの中にある特徴的な心理傾向を割り出しました。
その第一が強烈な被害者意識です。ストーカで被害者を追い詰め、傷つけているにも関わらず、彼らの心には「別れる理由をきちんと説明してくれない相手が悪い。」、「自分は誤解されている。本当の自分をきちんと理解すれば、よりを戻そうとするはずだ。」
との思いが心の中に渦巻いて、自己本位な考えに占有されているようです。
ストーカ行為をする人の8割は、第三者や警察などの警告によって、自身の行為を客観的にとらえることができて、その行為をやめるようなのですが、残りの2割は、他人がどんなに彼らの否を説明しても、決して受け入れることなく、第三者が介入したことで、さらに被害者意識を強め、強い憎悪を掻き立て、そのことだけしか考えることができなくなり、その苦悩に悶絶し、その苦悩の現況を被害者である相手のせいにして、その存在を消すことによって自らの苦悩を消し去りたいという強い衝動に囚われることによって、最悪殺害などの行為に及んでしまうそうです。
だれもが破恋などによって、一時的には悲しみ怒り落ち込みなどの感情に陥る可能性がありますが、だからといって誰もがストーカ行為に走りはしません。やはりストーカ行為をする人は、幼少期の生育環境において、孤独で親密な愛情を注がれてこなかった。その空虚感が、学歴、職業、お金、美貌など、社会で評価されるものを強く希求し、それを必死で求め、手に入れてきたことによって強いプライドを持ち、心に鎧を築き上げてきた心理的特徴があるようです。また相手は、そのような自分の鏡として作用し、愛情というよりも、相手の存在が自分のプライドを支える手段になっているようです。
だから、そのような空虚感を満たしてくれる恋愛相手から、(一方的にと彼らが感じるような)別れを切り出されたとき、その存在を失うことは、彼らの実存の危機にかかわることになり、それを失わないようにするなりふり構わぬ狂気を帯びることも必須なようです。
小早川氏は、被害者から要請されて加害者と接触を持ち、彼らの(受け入れがたい)世界観を聞き取り、そのうえでストーカ行為の無謀さと無意味さを容疑者自らが認めるようになるまで、辛抱強く付き合います。
そしてそれでも危険度がアップしたならば、警察や司法機関に連絡をとり、司法の手で被害者の安全を確保します。
小早川氏がストーカとの対話の中で痛感したことは、「そこまでこじれるストーカーはなにもしなければ決して治らない。彼らはストーカ病という病気なのだ。病気であるからには専門の精神治療を受けなければ治らない。」
というものでした。
法によって取り締まれるのは結果としての行為だけなので、容疑者がストーカ行為を改めようとしない限り、一生その恐怖に包まれて過ごさなければならなくなる恐れがあるのだから、小早川氏のいう治療対策は必要だと思いました。
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