朝日新聞で現在連載中の、記者自身の妻のがん闘病記は、食がいかに夫婦のきずなの礎になってきたのかが描かれ、がんが進行していく中で、食が支えとなっていることが如実に語られています。
結婚以来20年間転勤族の妻として、あふれる食欲と好奇心で転勤先の日本各地の食を味わい楽しみ、そして実際自分自身でも料理し、夫婦の食卓に登場させ、それを味わった体験が夫婦生活の基本となっていったことが、関西弁のあけっぴろげな妻の会話からうかがえます。
メラノーマ癌と宣告されて妻が真っ先に実行したことは、夫への料理の伝授でした。
きっとこれからの闘病ともしかするとを考え、今まで夫の健康維持のために自分が担ってきた料理を、夫自身に引き継いでもらおうとした妻の健気な愛情あふれる思いだったのだと思います。
しかしそれはたぶん残された時間を意識したためであろう、鬼コーチはびしびしと激しい言葉を投げつけながらの体育会系を思わせる厳しい特訓のようでした。
夫の料理の技の上達と並行して、妻の病状の悪化。
夫婦のきずなの危機を支えるのは、やはり結婚生活20年、二人で食べた食の思い出と妻の手料理の味。
妻の存在が、彼女の作った料理、一緒に食べた数々の料理の思い出と共に、文字通りそれが夫自身の身体を作っているという確かな実態。
料理の力ってすごいな。食べることは生きることそのものなのだな。と。
妻が料理を通じて夫に与えてくれた「地に足の着いた」20年間の結婚生活。
食の紡ぐ絆の深さに、独身の私は羨望に身もだえしてしまいました。
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