認知症研究の第一人者で認知症検査で用いる「長谷川スケール」の考案者長谷川氏が80代後半で認知症を発症されたことは話題になり、NHKでも特集として取り上げられました。
「誰でも高齢になると認知症のリスクがある。」ということは、長年の研究と臨床で確信したこととして長谷川氏が常に語っていたことだったので、期せずしてご自分の身でその説を証明されたことになります。
認知症に関して、「どうすれば認知症にならないか?」ばかりが焦点となり、肝心の認知症になった人がどのような感じ方をしているのか、何を求めているのかという実際の治療は、最近でこそ、認知症になった(その多くが若年性認知症の方ですが)当人が語り始めたことにより明らかになってきました。
長谷川氏が認知症になられても、積極的にご自身の「認知症体験」を語っておられることは、元専門家の立場だけに、これからの認知症研究に多大な貢献をすることになると期待しています。
息子であり、同じ精神科医として認知症研究に携わっている清氏が、認知症になった父親に対して
「やっと認知症になってくれた」と語っていました。
認知症になるまで高齢で生きていてくれたことに感謝していると。
そして認知症当事者として父親が語る言葉に、認知症治療者として新たな発見があったようです。
それは
「認知症になったことで、自分の中の『確かさ』が揺らぐ」という父の言葉でした。
認知症の人が何度も何度も同じことを繰り返し尋ねるのは(私の母もそうなので実感します)、
覚えられないことからくる確信のなさ、そしてそれが揺らぐことの不安を解消しようとしているからだと。
私も最初は母の繰り返しの問いかけにうんざりしていましたが、
「こうして母の言葉を繰り返し聞けるのも、あとどれくらいだろう。。。」
と感じると、その瞬間が愛おしく感じられて、
「何度でも繰り返していいよ。」
という思いになり、最近は、全くイライラしなく、むしろ繰り返し答えることがうれしくなりました。
そうすることで、母が「確かさ」を手にすることができて、安心できるのならと。
コメントをお書きください