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統治ということ

 コロナ感染緊急事態宣言が出て、毎日利用していた図書館が5月末まで休館のため、借りていた10冊を読み終えたら、テレビもない生活を送っているので、久しぶりに蔵書でも読み直すかと思っていたところ、大家さんから塩野七生氏の「ローマ人物語(文庫版)全30巻」をお借りできることになりました。

 塩野氏のこの著作はすでに五賢帝まで読み進めていました。

 しかし、今回、改めてローマ建国神話の巻から読み直してみると、2000年以上前、ヨーロッパに初めて生まれた「帝国」がどのようにして構築されていったのかが目くるめくように展開され、統治システムという人間理性の営みプロセスを、ローマ人が実に巧妙に、その時々の社会情勢に適応しながら、築き上げていったプロセスに、2000年以上前(日本ではまだ縄文時代)の人々の集団で暮らす人間の本質を見極めた深い洞察に感心しました。

 都市国家として生まれたローマの特徴は、早くから王権支配を脱却して、共和制による自治を確立させたことです。

 その間ゲルマン人による首都侵入破壊という出来事もありましたが、ローマは都市防衛をローマ市民権を持つ成年男子全員が担うという方式で、また以降は、ローマに組み入れるために、大規模な軍隊を組織し闘い、それに勝利し、敵対する相手を同盟国として吸収し、征服された人々にもローマ市民権を与え、緩やかな自治を与えながら、関係性にグレードを形成しながら、ローマを中心とする街道によって帝国の隅々にまで交通網やインフラをはりめぐらし、ローマ帝国という大きな文明圏を長い年月をかけて築き上げてきました。

 しかしローマが巨大になり、異民族を従えるようになると、民主的な共和制(といっても選挙なしに選ばれる500人の元老院議員による政治)では、統治が困難になってきたとき、現れたのがカエサルです。

 天才的な軍人であり、カリスマ性のある性格で、先を見通す知性があり、ローマの現状打破のためには、共和制を廃止し、一人のリーダーによる帝政が統治支配としてふさわしいと考え、それを実行しようとしたときに、共和制維持を望む若手グループに暗殺されてしまいました。

 今読み進めているのは、カエサル暗殺後、その意志を継いだ養子オクタビアヌスが、抵抗の強い共和制廃止をカモフラージュしながら、着実に帝政システムを構築していった過程を描いた巻です。

 これからは塩野氏曰く「ローマは高度経済成長期から成熟期に入った」時期で、帝国維持の段階です。

 果たしてローマはどのように帝国を維持していくのか。そして最終的にはそれが崩壊することは後世の私たちは歴史の授業で知っているのですが、その過程がどのようになされていったのか。

 緊急事態宣言のおかげで、統治ということの意味を考えさせられる日々です。