コロナ感染流行の終息の兆しが見え始めてきて、今、盛んに言われているのが「WITH コロナ」という言葉です。
ワクチンや特効薬が開発されるまで、新型コロナウィルスとの付き合い方は、手洗い励行、三密を避けるなど、私たちの行動変容によって感染を抑え続けるしか手段がないと思われるからです。
「WITH コロナ」という言葉で、「コロナ=他者」だと感じました。
倫理学者レヴィナスは他者問題を考え続けましたが、他者とは「全く理解不可能であるけれども、隣人として付き合わなければならない存在」として定義しています。
私たち人間にとって感染症を引き起こす細菌やウィルスは、まさに「まったきやっかいな存在だけれども、その存在を無視すること、抹殺することは不可能」な存在だと言えます。
そしてそれらは人間にとってマイナス(感染症状の苦しみや時には命を奪う、社会活動を制限し生活の変化を余儀なくされる等)の影響を及ぼすだけでなく、最近注目されている腸内細菌のように、人体はそれなしには生きていけない共生関係にあるものもあります。
同じくウィルスも、それが新型(これまで異種の動物間で循環していたものが、人間に感染するよう変異した)であるから今回のようなパンデミック現象を引き起こしましたが、それはそもそもウィルスの生態系に人間が侵入した結果引き起こされた人為的現象でもあります。
そして細菌もウィルスも、全く人間の生存の原理とは異なるやり方で生存しており、それはまさにレヴィナスのいう「他者」存在として、「他者」に対する対応を取らざるを得ないのではないでしょうか。
他者に対するもっとも実り多い関係性は、融合でも排除でもなく、他者との距離を適当に保ちつつ、「落としどころ」を探りながら共生関係を築き上げていく、他者の存在に対する敬意とも言うべき態度ではないかと思います。
関係性によっては自分に損害を与える可能性さえある存在は、本能的に不快で恐怖を感じ、排除したくなる敵意を抱いてしまいますが、それは不可能なことであり、そうすることのほうが双方の被害が大きくなってしまうということを過去の感染症との人類の歴史が物語っています。
新型コロナウィルスに適応するために、それがなかったそれまでの生活から変容を余儀なくされ、不自由や不便や損失も被るかもしれませんが、真相は一緒になんかいたくない存在と「WITH」しなければ生きていけない存在ならば、むしろ積極的に前向きに「WITH」できる方法を考え出していかなければならないと思いました。
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